1.ロシア連邦は、2022年2月24日、ウクライナに対する「特別軍事作戦」を開始しました。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によれば、5月23日現在、ウクライナ国外に避難した人は600万人を超え、同国内で避難生活を余儀なくされている人はおよそ800万人に上るとされています。
2.このウクライナ難民について、報道では、「ウクライナ避難民」と呼ばれており、「ウクライナ難民」とはされていません。
3.難民ではなく、避難民としているのは、ウクライナ難民を難民条約上の難民と認め、難民条約に基づき受け入れる事態になることを避けたいからだと思います。
総理大臣は、ウクライナ避難民の受け入れ対策として「難民条約上の理由以外により迫害を受ける恐れのある方を適切に保護するため、法務省で難民に準じて保護する仕組みの検討を進めている」と述べています(2022年6月2日付け「ウクライナ避難民保護を名目とする入管法改定案の再提出に反対する会長声明」東京弁護士会参照)。
ウクライナ難民を条約上の難民として義務的に受け入れる事態を避け、これに該当しない準難民として裁量的に庇護を与えたいという政府の意向が、「ウクライナ避難民」という言葉に込められているのです。
4.難民条約上の難民は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々です。私は、ウクライナ難民の多くは、条約上の難民に該当し、条約上の難民としての庇護が与えられなければならないと考えています。
5.令和3年における日本の難民認定者数は74人にすぎず、本国の情勢から当然に保護されるべきビルマ出身の32人を除くと、42人に過ぎません。このように、日本では、保護されるべき難民が十分に保護されない極めて厳しい状態が続いています(5月13日付「入管庁発表『令和3年における難民認定数等について』を受けての声明」全国難民弁護団連絡会議)。
6.ウクライナ難民への支援を契機に、日本が難民を広く受け入れる国となることを願っています。(弁)